◆ BEST SELLER ◆ ベストセラーの背景
ベストセラーについて:
イタリア国内販売におけるベストセラーという呼称が、果たしてどのくらいのセールス実績によるかは、詳細不明。
それは、宣伝用のキャッチ・コピー以外に、精確な数字が発表される機会が殆どないため。
現代の作家で、上位にランクインを続けた本の実売総数にしても、最終的に70〜80万部くらい、というところが実状らしい。
つまりイタリアでミリオン・セラー(100万部)を記録するのは、かなり途方もないことなのです。

ただし、人気の高い作品は、けっして一時期の話題作にとどまらず、とても長い年月をかけて一定の好セールスを続けるというのも、イタリア書籍の特徴。
売れ続ける作品は、何年もの間ずっと店頭に不動の位置を占め、ローマの古代遺跡のように不朽の存在となる。
平積みのコーナーでも、話題の新刊と古典の名作が隣り合わせだったり、国内作家と海外文芸翻訳モノとの境界が曖昧だったりするので、要注意。
ヘルマン・ヘッセ「車輪の上」のすぐそばに、ウンベルト・エーコの作品群を挟んで、吉本ばななの「キッチン」がそれぞれ山積みで並んでいても、それはわりとありふれた光景なのです。


■ Classifica 月間総合ランキング ■
Marzo, 2001 2001年3月
Febbraio, 2001 2001年2月


Classifica Marzo, 2001/ 2001年3月の月間総合ランキング
順位 titolo・autore・editorice (タイトル・著者・出版社)
邦題
"Figli del Nilo" Smith Wilbur, Longanesi 「フィッリ・デル・ニーロ」(ニーロの子供たち)スミス・ウィルバー
"Harry Potter e il calice di duoco" Rowling Joanne, Bonpiani 「ハーリーポッターと火の聖杯」J・K・ローリング
"Rispondimi" Susanna Tamaro, Rizzoli 「リスポンディミ」(答えて…)スザンナ・タマーロ
"Non siamo capaci di ascoltarli.Riflessioni sull'infanzia e l'adrescenza" Crepet Paolo, Einaudi 「親はこどもたちの心がわからないー幼少期と思春期の鏡」クレペト・パオロ
"Harry Potter e la pietra filosofale" Rowling Joanne, Bonpiani 「ハーリーポッターと賢者の石」J・K・ローリング

[総評]
2001年3月のベストセラー・ランキングは、「ファンタジー」と「心理学」の二色に塗り分けられてしまいました。
内省的な本が続々と刊行されるなかで、「別世界」ものが売れているという現状。
なんだか人生に煮詰まって「いやこのままでは…」と「ええい、いっそ…」の間で揺れているような感じ、といのは邪推でしょうか。
多分、長い冬をようやく抜けるか抜けないか、という季節柄もあったのだろうと思います。今年のPasquaパスクア/復活祭は例年よりも遅めですし。
これから春に向けて、どんな本がランクを賑わすのか楽しみにすることにしましょう。

●ハーリーポッター強し!!これは今や全世界的現象?
「いまやイギリスは文化の輸出大国である」と言ったブレア首相は正しい。ミュージック・シーンのみならず、出版業界からハリウッドの映画産業まで旋風を吹き起こす「ハーリー・ポッター」。グルメやファッション、インテリアなどロンドン発信のムーヴメントに、世界中が憧れのまなざしを向けている。
ロンドン・カルチュアの良さは伝統と革新のほどよいブレンド具合。
イタリアでは、古さとは文明の発祥に至るほど古くて、新しいものは尖鋭的に新しい…両極端なんですよね、なんとなく。


●いきなり一位に躍り出てきたのが、スミス・ウィルバーの最新刊。
英語のミステリー翻訳作品は、イタリアでもかなり人気の集中する部門です。
ケン・フォレット、ジョン・ル・カレ、パトリシア・コーンウェルなどなどなど。最新刊が発表される度にベスト・セラー・リストを賑わす。
「太陽の子・ラムセス」が、イタリア国内のブック・チャートを席巻してから、はや数年。
エジプト古代文明ものへの期待は充分、そりゃ売れないはずがない。


●"Non siamo capati di ascoltarli. Roflessioni sull'infanzia e l'adrescenza"
なんて長いタイトル…。
これはいわゆる心理学本です。親心の心理学、子供心の心理学。
親子の世代間のギャップ、親子の相互不理解、両者の抱える悩みと孤独。
家庭や学校教育の現場崩壊という時代の不安と、その根源的な理由と、傾向と対策。
le mamme italianeイタリアのマンマがいる限り大丈夫、イタリアももはやそんな時代ではないのでしょうか。
万人に共通のユートピアなんてあるわけもないので、理想と現実のギャップを、諦めと希望で少しずつ埋めていくしかないと思うのですが…。
それでも不安なんですよね、そんなものです、人間だもの。



Classifica Febbraio, 2001/ 2001年2月の月間総合ランキング
順位 titolo・autore・editorice (タイトル・著者・出版社)
邦題
"Rispondimi" Susanna Tamaro, Rizzoli 「リスポンディミ」(こたえて…)スザンナ・タマーロ
"L'ultima distretto" Patricia Cornwell, Mondadori 「審問」パトリシア・コーンウェル
"Baudolino" Umberto Eco, Bonpiani 「バウドリーノ」ウンベルト・エーコ
"Harry Potter e la pietra filosofale" Rowling Joanne, Bonpiani 「ハーリーポッターと賢者の石」J・K・ローリング
5 "La scomparsa di Pato'" Andrea Camilleri, Mondadori 「ラ スコンパルサ ディ パト」(パトの失踪)アンドレア・カミッレッリ

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[総評]
2001年2月のベストセラー・ランキングを振替えると、実力・人気ともに備えた作家が揃い踏みのため、安定傾向のランキング。
ただし、サイトによっては極端に売れている本などもあって、総合ランキングはかなり独断です。


●GIORNO DOPO L'ALTRO di CARLO LUCARELLI
Fertrinelli社のサイトでは”Giorno dopo l'altro”というLucarelli氏の本が大絶賛されているのですが、
iBS社のサイトではすでに下降線だし、repubblicaサイトでは影もカタチもない。
インターネット、シリアル・キラーがキーワードだけに、一般層への広がりは期待できないのかも。

プロファイリングを駆使して、姿なき連続殺人犯を追跡する若き婦人警官が主人公。
もう一方の主人公、彼女の姿と平行して描かれる犯人は、その動機も思考回路も曖昧で、読み手をとても不安にさせる。

女主人公が多忙な勤務の合間を縫って自分の部屋に帰る。彼女の部屋には、盲目の恋人が待っている。
「ごめんなさい、忙しいの、今」といい訳を繰り返す主人公。「またすぐ署に戻らなくちゃ」
「君にはそんなこと考える暇もないかもしれないけれど」目の見えない年下の恋人はつぶやく。「君の不在の時間が、どれほどぼくにとって寂しいものなのか」
彼は見えないはずなのに、彼女を見透かすような視線を送る、「でも、君がそばにいても、ぼくはときどきたまらなく寂しいと感じる…」

出口の見えない迷路を手探りですすむような感触。
どことなく「ケイゾク」めいた雰囲気が垂れ込めている。『柴田ぁ!』なんて。
ひとによって好き嫌いの反応が極端に現れそうな内容と文章です。

スザンナ・タマーロがじわじわ実績を伸ばしている一方で、ウンベルト・エーコは一段落着いた感じ。息切れか?頑張れ、エーコ。

●BAUDORINO di UMBERTO ECO●
「バウドリーノ」は、紀元前・ヘレニズム期、エジプト・ギリシャ・メソポタミア一帯を支配下に治めたアレクサンドリア王国と大王アレキサンダー物語。
もっとも、アレキサンダー大王またの名をバウドリーノという人物は、この物語のなかには存在しない。
同じバウドリーノという名をもつ、辺境生まれの少年が、時の王の養子となって、賢者の間で文学修練の日々を続ける。
空想力豊かな少年バウドリーノは、彼のなかに「アレキサンダー大王の歴史」を宿す。
「歴史」とは単に紙の上に綴られた物語に過ぎないのか?
勇壮な時代絵巻きは文学者の夢想の言祝ぎなのか?
Istoria・storiaという言葉が、同時に「歴史」と「物語」を表わすとき、現実と空想の壁はすべて消去される。


●RISPONDIMI di SUSANNA TAMARO
同作品集には三つの中編を収録。三編とも、こころに深い傷を負った女性が主人公。
表題作『RISPONDIMI』のなかで、主人公、Rosaローザは訴える、"Rispondimi"こたえて…と。

こたえて、答えて、応えて、わたしに、わたしだけに。でも、誰に向かって?なにを求めて?
ローザは孤児。娼婦だった母親。父親の顔は知らない。孤独、いじめ、暴力、ドラッグとアルコール浸りの生活。
自分の生まれた意味も価値も、人を愛することもそのすべも、わからないローザ。
彼女に下される宣告、望まぬ妊娠。

たどりついた日常の先は、断崖。つきつけられた人生の選択。運命の岐路。
「わたしたちは、かりそめの棲家、悪しきものへの種子」それが、わたしたちの存在。
かけがえのない唯一の『わたしたち』になるために、「殺すわ、あなたを」。
生きるために、手に入れるために、そしてあなたからわたしを解き放つために―あなたを、殺す。
追いつめられるようにして、思いつめる女たち。

わたしたちは傷つき病んでしまったのだろうか、ここからの救いの道はあるのだろうか。
わたしたちは誰かに依存しなければ生きていけないのだろうか、独りひとりずつでもどうにか日々をやり過ごせるのだろうか。
それとも、どうしても、わたしたちには、この先の道標を指す「だれか」の存在が必要なのか――?

『人間性の絶望、他者から及ぼされる苦痛と自らを蝕む苦悩とを描いた作品』と、著者スザンナ・タマーロは述懐する。
RISPONDIMI』 こたえて…。女史の筆は、この現代に生きる「わたしたち」のこころを、優しく掌に拾い上げ、すうっとメスを引き、そっと傷口を開く。

生きていくことは、そう、ときどき余りにも切なくて、わたしたちの心を軋ませる。

カミッレッリ氏の作品は多数同時ランクインを確認、今イタリアで一番「旬」なイタリア人によるイタリア人のための作品。
シチリア方言の芳醇な味わいと、謎ときがお楽しみ。
ca'mmora da letto→camera da letto→寝室  などなど、ガイジンさんとしては、辞書にはない単語に出会う度に四苦八苦。


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